旅するミタブン

文芸誌『三田文學』の歴史、ゆかりのある作家を巡る小さな旅の記録です。

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神奈川近代文学館へ  「装幀=菊地信義とある『著者50人の本』展

 『旅するミタブン』。
第1回目の旅は、横浜市にある「神奈川近代文学館」へ行ってまいりました。


20140704 神奈川近代文学館 


横浜市の山手。海とベイブリッジを見おろす「港の見える丘公園」内に、季節の花や緑に囲まれて建つ文学館。
2010年の「三田文学創刊100年展」、また「三田文学名作選」の巻頭グラビアでも資料を貸してくださるなど、いつもお世話になっています。


20140704 展示扉

現在は企画展「装幀=菊地信義とある『著者50人の本』展」(~7/27)を開催しています。
菊地さんは現在までに1万2000冊以上の装幀を手掛けていらっしゃっている大御所。
そして、神奈川近代文学館で初の試みである「装幀」にテーマを絞った展示ということで、楽しみにしていました。

会場へ入ってすぐ、1冊だけ、ふっと浮いているかのように展示されているのがモーリス・ブランショの『文学空間』。
駒井哲郎の装幀で、菊地さんが装幀家を志すきっかけになった本です。
駒井さんの作品は、「三田文学」の表紙やカットで目にした方もいらっしゃると思います。

「装幀というもののもっている魅力のとりこにした本」(菊地信義『装幀談義』)というこの1冊は、実際に菊地さんが学生時代に自宅近くの書店で購入したものを展示しています。

20140704 文学空間 装丁家へのきっかけ
『文学空間』 モーリス・ブランショ著 粟津則雄、出口裕弘共訳 駒井哲郎装幀


菊地さんが広告代理店に勤務していた頃、ある雑誌の編集者兼アート・ディレクターとして粟津則雄と会うことになります。
そのとき『文学空間』の話が出て自然とふたりは「事務的なかかわり」だけでなく「いっしょに飯をくったり酒をのんだり」するようになったそうです。のちに菊地さんが装幀家として独立した際、粟津さんはご自身の評論集の装幀を依頼しました。

20140704 主題と構造 粟津さん
『主題と構造』 粟津則雄著 菊地信義装幀  写真内その他の書籍も同様

粟津さんはレオナルド・ダ・ヴィンチの晩年の素描『大洪水』を使ってほしいと、ひとつだけ条件を出しました。
この話は、展覧会の図録「菊地信義とある『著者11人の文』集」に掲載されているので是非ご一読ください。
とても興味深い、「図録」の印象を超えた「図録」です。


菊地さんの装幀は、1冊ずつ個性があります。
パターン化されることなく、その1冊の内容が表まで滲み出ているように感じます。
今回のブログでは、その中からほんの一部だけ紹介します。


20140704 光速者 埴谷雄高
『光速者』 埴谷雄高著 菊地信義装幀  写真内その他の書籍も同様

おそらく装幀家・菊地信義の名前が読書家以外にも知れ渡るきっかけになった1冊ではないでしょうか。
著者である埴谷雄高の脳のCT写真を使うという斬新のアイデアを奇抜なだけに留めないデザイン力。
きっとそれだけではなく、埴谷さんの作品を読み込み理解し愛し昇華させたゆえの装丁なのでしょう。



20140704 稲川方人 封印
『封印』 稲川方人著 菊地信義装幀

稲川方人の詩集『封印』。
実際の表紙の色は漆黒です。
この写真は光が多く入るように撮影しました。それでも、やっと『封印』されたタイトルと作者名が読める程度です。
現代詩の持つ特性と詩人の心を理解したからこそできる過激なデザインではないでしょうか。


今回の展示の中でも私にとってひときわ魅力的だったのが、実際に本に触れることができるコーナーです。
本は飾るためのものでなく、枕にするためのものでもありません。
読まれる為にこそ存在しているのです。
表紙の手ざわり、重さ、ページをめくる指先。
そういったところにまでこだわる菊地さんの装幀哲学を感じることができるコーナーでした。

20140704 触れるコーナー1


20140704 触れる 中上健次 水の女
『水の女』 中上健次著 菊地信義装丁 
実際に水の表面を撫でているようなひんやりとした感触のする表紙です。

20140704 触れる 澁澤龍彦 マルジナリア
『マルジナリア』 澁澤龍彦著 菊地信義装丁 
表紙のザラザラとした布地の手ざわりは、古い「旅行記」を想像させました。
読書は知識と意識の旅であり、手に取るだけで旅立ちの興奮をかきたてられる。
そして何度でも旅に出たくなる。不思議な力を持った装丁です。


ブログでの紹介はここまでにします。
展示の第2室では、菊地さんの最近の装幀作品を見ることができます。


携帯タブレットなどの躍進が目立つ昨今ですが、実際に本を持ちその重さをしっかりと手に感じながら先を気にしてページをめくり、ふと思い返して戻る。
小脇にかかえて町の喫茶店まで歩く。
気に入った言葉のあるページの端を折り、何年もしてから読みかえして、当時を思い出す。
本そのものの魅力を再確認できる展示でした。

企画展の他に常設展「神奈川の風光と文学」も開催しています。


神奈川近代文学館への行き方 (リンクを貼っています。クリックしてください)


reported by kurosuke
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  1. 2014/07/08(火) 11:24:27|
  2. 文学館
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はじめまして

皆様、はじめまして。

今月から『旅するミタブン』という題で、ブログを書かせて頂きます。

表紙 初回


まずは簡単に「三田文學」の紹介。

「三田文學」は明治43年(1910年)、永井荷風が主幹となって創刊されました。
何度か休刊しましたが、その度に復活し、創刊100周年を突破。
現在は若松英輔編集長のもとに、学生を中心に多くの人が集まって、年4回、雑誌を発行しています。

創刊時からの伝統で、「三田文學」の門戸は常に開放されています。
雑誌に書く人たちはもちろん、編集する側の人たちも慶應義塾の枠にとらわれることはありません。
先輩たちもふらりと立ち寄って、飲みに連れて行ってくれる。
そして文学のことや、まったく関係ないことやらを色々と教えてくれるのです。

新人作家を育てるというのも、もうひとつの伝統です。
毎年新人賞の応募をしていますし、持ち込み原稿にもしっかりと読みます。

このような伝統が、何度でも復活する力の源になっているのだと思います。

20130513 旧図書館
慶應義塾大学旧図書館。
(「三田文學」の先輩で詩人の井上輝夫さんに、この図書館をめぐる思い出話を聞かせて頂いたことがあります。)


このブログは、文学の香りが漂う場所、「三田文學」の歴史、ゆかりのある作家を巡る『小さな旅』の記録です。

みなさまの旅のきっかけになれれば、幸いです。

今後とも、よろしくお願いいたします。


  1. 2014/07/04(金) 15:03:18|
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プロフィール

旅するミタブン

Author:旅するミタブン
『三田文學』は明治43年に創刊の文芸誌です。
現在は季刊で年4回、1月、4月、7月、10月に発売されています。

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